コラムColumn

線が引かれた本

メディサイト 谷村 美保

 社長から事業を引き継ぐにあたり、たくさんの本を譲り受けました。それらは単なる蔵書ではなく、「愛読書」と呼ぶにふさわしいものばかりでした。
ページを開くと、至るところに付箋が貼られ、線が引かれています。中には、書き込みや小さなメモが残されているものもありました。
どこに心を動かし、どの言葉に立ち止まり、何に悩み、何を決断してきたのか。その一つひとつの痕跡から、社長の思考の軌跡に、そっと触れるような感覚を覚えました。
正直なところ、私自身もすでに持っている本は少なくありません。同じタイトル、同じ版。内容も知っているはずの本です。
それでも、不思議なことに、まったく別の本のように感じられます。

 線が引かれている箇所は、必ずしも自分と同じではありません。むしろ、「どうしてここに線を引かれたのだろう」と考えさせられることの方が多いのです。
けれども、その違いにこそ、大切な意味があるのだと思います。
自分が大切にしてきた視点と、社長が大切にしてきた視点。その“違い”や“重なり”に静かに向き合う中で、これからの事業へのヒントが見えてくるように感じています。

 現在、これまでの歩みを整理しながら、ホームページのリニューアルをしました。いわば、「事業2.0」に向けた再構築の過程にあります。
新しくすること。変わっていくこと。それらは、これからの時代において、とても大切なことです。
けれど同時に、「何を引き継ぐのか」を見つめ続けることも、同じくらい大切にしたいと考えています。
理念や想いは、言葉だけでは伝えきれないものがあります。制度や仕組みだけでも、十分とは言えません。
人がどこに線を引いたのか。どの場面で立ち止まり、考えたのか。そうした言葉にならない部分にこそ、本質が宿っているのではないかと感じています。
事業を引き継ぐということは、単に資産や仕組みを受け継ぐことではなく、そこに込められた「問い」を受け取ることなのかもしれません。
この本に引かれた一本一本の線に、静かに向き合いながら、これからは私自身も、自分なりの線を引いていきたいと思います。その積み重ねが、次の時代へとつながっていくことを願いながら。

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