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コラム
 
2018年診療報酬改定を読み解く B介護報酬、ITC(情報通信技術)活用評価などに見る新たなトレンド
メディサイト 松村 眞吾

 今回の介護報酬改定は、内容的に歴史的なものとなった、と語り継がれるかもしれない。いわゆる「自立支援」介護である。ADLをメインに自立(要介護度)改善が見られた場合にインセンティブを与えるというもの。介護保険法は、第1条でその人の「尊厳」を謳う一方、第4条で「有する能力の維持向上」を記している。「自立支援」介護は法の規定に沿ったものなのとも言えるのだが、報酬でインセンティブを設けることにより、リハビリの強制といった事態が生じかねないと議論となっている。埼玉県和光市での取組みを「和光モデル」として「介護卒業」を目指す動きを推進しようとする国の政策が改定に盛り込まれているというのだ。

 介護関係者の中からはADL(日常生活動作)中心の「自立支援」がQOL(生活の質)を蔑ろにするものだという批判が、この1年以上に亘って行われてきた。ケアマネに対して、要介護者に寄り添うケアプランより「自立支援」を優先させろというものだという声もある。和光市当局者も「和光モデル」は同市独自の取組みと組み合わせて行っているもので、単純な「介護卒業」を目指すものでない、他地域が単純に真似られるものではないとするが、メディアにおいても「自立支援」介護を評価する論調が出てきている。

 今回の改定で報酬内容が様変わりしたわけではない。ただ方向性としては「自立支援」が進んでいくだろうと思われる。財政が厳しくなって行く中で、介護も何らかのアウトカム評価が求められる。QOLなどのような定性的要素は評価対象となりにくく、ADLのような定量的要素が重みを増していく。バランスが大事なのであるが、介護保険者である市町村は「自立支援」に傾斜していってしまわないか、ということが懸念されている。

 一方で、センサー設置で夜間配置加算の要件が緩和されることとなったが、けしからん、人間のケアに置き換えられるものか、という批判の声が挙がっている。果たして人間のケアこそが優れていると言い続けられるだろうか。診療報酬改定では、オンライン診療が予想以上に採り入れられた。2025年が問題とされるのは、団塊世代のいわゆる後期高齢者入りが、支える人手の圧倒的な不足を意味するからである。温かみの欠いたケアにならないように検証を行いつつ、介護ロボット導入やICT活用によるオンラインなど遠隔医療の導入も進めていかないと医療も介護も崩壊してしまいかねないという状況がある。

 財政だけの問題ではない。支え手不足が最大の問題となる。またケアの質は人手の多寡で決まる、という先入観は取り除いていかなければ、医療も介護も対応できなくなる可能性が大きい。ケアの質評価、アウトカム評価を議論しながら、効率化を目指す改定に対して、質の向上を併せて実現するような策を考えなければならないだろう。共生ケアなどは一つの方向だと考える。詳しくは、稿を改めて論じたい。  

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