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コラム
 
チーム医療と医療経営〜チーム医療を点と線と面から考える〜
横浜市立市民病院 臨床工学部
臨床工学技士 相嶋 一登

 チーム医療という用語が使われるようになってから歳月が経ち、この用語は医療界のみならず社会に根付いていると思われる。
 チーム医療とは、平成23年のチーム医療推進会議の中で「医療の質や安全性の向上及び高度化・複雑化に伴う業務の増大に対応するため、多種多様なスタッフが各々の高い専門性を前提とし、目的と情報を共有し、業務を分担するとともに互いに連携・補完しあい、患者の状況に的確に対応した医療を提供すること」と説明されている。
 そして近年の医療に対する多様なニーズに応えるために、診療報酬上チーム医療を評価する事例が増加している。チーム医療が医療の質を高め、患者や医療従事者の満足度を上げることに異論はないが、筆者は診療報酬で評価されることによって本当の意味でのチーム医療が見えにくくなっていると感じている。本来チーム医療とは医療提供の本質的な姿であり、時間帯に関わらず同じ医療を行うには同じチーム構成で継続的に行う必要がある。つまり本来のチーム医療は「線」でなければならない。
 しかし診療報酬における算定基準では「週に1回以上」など間欠的な関与で算定できるように定められていることから、医療機関によってはこの算定基準を満たすため“だけ”に各専門職が集合して院内をラウンドすることになる。これでは本来の医療提供の継続性が担保できないばかりか、担当する医療従事者の内発的動機付けにつながらない。このように診療報酬で定める最低限の要件を満たすために各専門職が集合することを筆者は「点」のチーム医療と呼んでいる。「点」のチーム医療は見かけだけのチーム医療であり、本来目指す医療の姿ではない。

 近年『チーム医療』がクローズアップされている。それは医師の働き方改革を進めるため、チーム医療を推進して医師の負担を軽減しようとする考え方である。これをタスクシフティングと呼んでいるが、タスクシフティングには二つの論点がある。
 第一に本来は各専門職が担うべき業務を医師が行っている場合に、専門職に業務を任せる、といったものである。これは既に専門的な教育を受けた専門職が活用されていない、といった課題であり、速やかに課題を解決することができる。第二の論点は、従来は医師の独占業務であった行為の一部を一定の研修を受けた医療専門職に担当してもらおうというものである。既に特定行為研修を修了した看護師による医行為の実施は開始されているが、当初の想定よりも特定行為研修を終了した看護師の人数が増加していないようである。
 次に臨床工学技士を始めとしたメディカルスタッフの業務拡大が議論され始めている。メディカルスタッフとしては新しい領域を取り込むことで新しい形で社会に貢献できるというメリットがある一方で個々の医療従事者への教育研修に関するコスト負担が問題となる。従来は製薬会社や医療機器メーカが学会や研究会に協賛金として費用の一部を負担することで、我々医療従事者は安価な参加費で勉強することが出来た。しかし利益相反の考えから現在では企業による協賛金の取扱いについては適正化が進んでいる。つまり相対的に医療従事者個人および医療機関の教育コストは増大している。
 医師の働き方改革のために発生する新たなコスト負担についても重要な課題である。
タスクシフトを受ける側の医療従事者がやりがいと使命感をもって業務拡大に対応しなければ、医療の質低下を招き結局は国民に不利益が生じることになる。タスクシフトに伴う教育、インセンティブについての議論が深まることを期待している。

 今後更なる医療ニーズの多様化への対応や医療組織の変革が求められている中では、チーム医療は組織全体、医療界全体に染み渡ることが必要である。まさに「面」のチーム医療が必要となっているのである。

 
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