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コラム
 
 今の医療に満足していますか?
 旧勝川ファミリークリニック
北村 和也氏

 日本の医療は世界的に賞賛されています。国民全員が医療保険に入っており、平均寿命は世界トップクラス。赤ちゃんの死亡も少なく、その上、医療費は他の先進国よりもかなり低い。数字の上からは、日本の医療は世界トップレベルのようです。しかし、皆さんは今の医療を受けて、本当にそのように感じられますか。

 患者さんが医療に最も期待することは何でしょうか。的確に診断して治療を行うことは当然のことでしょうが、日本を含めていろんな国で行われた調査によれば、患者さんが医療でもっとも重要視していることは、「話をよく聞くこと」であり、これは万国共通の期待のようです。皆さんは、病院に行ってきちんと話を聞いてもらえたと感じることがありますか。

 ここにおもしろい調査結果があります。日医総研というところが平成16年に調べたもので、「話をよく聞いてくれる」ことに満足していますかという質問を患者さんと医者とに行い、その結果を比較しています。それによると、かなり満足していると答えた人の割合は、医者では9割以上であったのに対し、患者さんで実際にそう答えたのはわずか4割弱でした。すなわち、医者は患者さんの話を聞いているつもりでも、患者さんはそうは感じていないことも少なくないようです。このような患者さんと医者とのギャップはそう珍しくないのかもしれません。

 医療に携わっていると、いろんなところでいやな話を聞くことがあります。「あの医者は患者さんの顔を見て話をしない」とか、「患者さんを平気で怒鳴りつける医者がいる。」などです。このような医師は少数派なのでしょうが、日医総研の調査結果を合わせてみても、患者満足度という視点からは、残念ながら日本の医療はまだまだ改善の余地があるようです。 

 数年前から日本の医学部でも医学コミュニケーションの教育が盛んに行われるようになりました。まずは患者さんの話にじっくりと耳を傾けようという試みです。考えてみれば、患者さんの話を聞くことは、的確な診断、治療に必ず必要なことであり、検査がどんどん発達してきた一方で、日本の医療者が忘れかけていることの一つかもしれません。

 「問診」という言葉があります。医者が患者さんに「問いかけ、診断する」という意味ですが、医者から尋ねてばかりいたのでは、患者さんの話に耳を傾けることは難しくなってしまいます。私たち医療者は、今一度、「患者さんの話を聞く」という基本を見つめなおす時期にさしかかっているのではないでしょうか。
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