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コラム
 
2021年介護報酬改定の意味するもの
メディサイト 松村 眞吾

 介護報酬改定の季節となった。マスコミ報道などでは0.7%のプラス改定でコロナ禍に配慮したものとなった、とポジティブな印象を持たせている。今までの改定で苦しんできた介護事業者にとって福音となるのだろうか。0.7%の内0.05%はコロナ感染症対応に伴う9月までの時限措置であり、その他の改定内容をよくみると喜んでばかりはおれない、と考えるべきではないだろうか。

 個別報酬のことは別に触れることにして、ここでは今回の改定の意味するものを述べておきたい。実は、こんなに厳しい改が、過去にあっただろうかという内容なのである。多くの介護事業者は個別報酬に目を奪われるが、今回ばかりは全体をよく掴んでおいて欲しい。

 紙幅の関係で幾つかに絞って述べておく。先ず、科学的介護の本格的な導入ということについてである。今般、要介護者の状態に関するデータであるCHASEとリハビリに関するデータであるVISITを統合したLIFEというデータの提出と利活用が推進されることになった。事細かなデータを提出し、そのフィードバックを受けて介護サービスの質向上を図ってくれということ。医療で言えばDPC導入に匹敵することだと考えて良い。

 データ提出のためのシステムはどうなるのか、フィードバックされてきたデータの利活用など出来るのか、職員も半分が「科学的介護といわれても…データってどう入力するの、それの意味は何なの」と戸惑う状況が想像される。DX(デジタル化)が一気に押し寄せてくる、そう考えるべきだろう。実際、現場は混乱し始めている。

 コロナ禍で問われたのが感染予防の体制などである。今回の改定では感染予防策やBCP(事業継続計画)について策定と委員会設置など体制整備が求められる。クラスターが多発した実際があり、自然災害が増えている状況がある。しっかりとしたマネジメントを求めてくるのも至極当然のことであろう。

 例えば現場管理者にBCPとは何かを問うてみると良い。聞いたことはあっても内容を理解している管理者は多くないはずである。感染予防のマネジメント、BCP、もちろんリスクマネジメントなどもある。どこまで可能であろうか。

改定全体を子細に見てみると、加算算定要件のハードルが高く、かつ加算が算定できなければ基本報酬が下がってしまうような構造になっていることに気付くだろう。要するに実質マイナス改定となる事業者が増えるということである。よく内容をチェックしてみたい。

 コロナ禍前から続く人手不足と人事労務対応、コロナ対応、そして今回の改定対応と、介護事業には高い水準のマネジメントが要求されていく。地場の中小規模介護事業者は生き残れるのだろうか。国の狙いが透けて見える。さっさと経営を統合していきなさいと言いたいのだろう。今まで、経営者と現場管理者には運営管理だけが必要であった。今後はマネジメント力がなければやっていけない。業界大手のツクイホールディングはファンドのTOBに賛同し、同社は上場廃止となる。先行き不透明が賛同の理由とのこと。ツクイショックが走った。介護事業経営者は、今回改定には、よく考えて対応したいものだ。

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