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コラム
 
介護分野で“健康のためにプチ就労で働く”制度の反響

 人手不足に悩む介護業界等で高齢者が専門職の周辺業務で短時間働くプチ就労の仕組みを自治体と共創したところ、予想をはるかに超える高齢市民からの応募があった。その活動コンセプトと参加者の声を紹介する。
 最近米国が未病に対する統合的アプローチとして注目している貝原益軒(1630-1714: 筑前黒田藩の医学・儒学・農学者)のベストセラー「養生訓」巻第一総論に、“うごく者は長久なり、うごかざる者はかえって命みじかし。是を以て、四民(士農工商)ともに(仕)事をよくつとむべし、安逸なるべからず、是すなわち養生のすべなり”とある。
WHOも生活機能モデルにより、社会参加・役割をもつことが生活動作とそれを支える心身機能の維持に密接に関係していることを説明している。
 一般には“健康だから活動できる”と思われがちだが、順番は逆で“活動しているから元気で健康を保つことができる”…これが、高齢者を対象としたプチ就労活動のコンセプトである。
 このコンセプトを実践すべく、兵庫県宝塚市の施策“エイジフレンドリーシティ宝塚”の一環で「健康・生きがい就労トライアル」制度を創り、人手不足で困窮している介護分野と保育分野で取り組んだ。
 直接介護や保育を行うのではなく、スタッフの負荷軽減を狙って未経験高齢者でもできる周辺業務を切り出し、まず3か月間1日2時間・週2日のお試しトライアル(パート就労)を実施する。トライアル終了後は事業者と参加者の合意のもと、時間や日数を増やしながら継続して働ける制度である。2019年度は介護分野が主だったが、80歳までの高齢者75名がトライアルに参加し、その後の継続率は8割に及んだ。
 この制度に対し参加高齢者から多くの肯定的な感想が寄せられた。
・生活のリズムができ、お小遣いも入り、充実した日々を過ごせる。
・家でテレビばかり見て一日中ボーっとしていてもしょうがない。誰ともしゃべらない日がありこれじゃいけないと思っていた。
・退職後およそ10年のブランクがあり、就労に少し不安があったがよい機会だった。
・誰かの役に立っていると思うと生活に張りが出る。 等々
受け入れる事業所側からも高く評価され、双方からこの仕組みの継続が期待されている。

 近年、人や社会とのつながりに関する“健康効果”が注目されている。つながりが切れたり乏しくなったりする孤独、孤立が及ぼす影響は、個人だけでなく社会経済的にも大きいとの試算もなされ2018年の英国につづき、2021年に日本でも孤独担当大臣が創設されることになった。
人や社会とつながるうえで“仕事”の果たす役割は大きい。

 今、コロナ禍で外出自粛などにより生活の不活発化が高齢者のフレイルを助長し、要支援、要介護者が増加している。これについては、行政や福祉団体だけでなく高齢者自身も強い危機感をもっている。大阪府摂津市では、介護予防の観点から感染症対策をして2021年3月ケアサポータートライアル制度をスタートさせる。このコロナ禍にもかかわらず10名を超える高齢市民が応募したという。
 福岡県からも“健康・生きがい就労トライアル”を試行したいとの話があったことから、今春NPO法人として「健康・生きがい就労ラボ」をスタートさせ、介護、保育をはじめ、農園芸、学校教育、デジタル(スマホ教室)分野も含めプチ就労によるサポータートライアルを展開していくことになった。
 無理のない範囲で社会貢献を感じながら傍楽(はたらく)ことについて、“情けは人のためならず”とシニア世代に呼び掛けている。
活動することで人は元気になる。

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