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コロナ第5波対応に問われるもの‐連携と横展開
メディサイト 松村 眞吾

 コロナ(COVID-19)感染爆発で、在宅でのコロナ患者対応が必要な状況となっている。医療崩壊、医療ひっ迫と言われる中で、医療現場に必要なものは何か。医療経営の立場からも発信すべきことがある。現場のストレスマネジメントなどのことは、今まで書いてきたので、ここでは「連携」と「横展開」について絞って論じたい。

   初期から在宅コロナ対応に取り組んできたグループがある。特記すべきは、徹底した連携構築である。医師、訪問看護師などの一般的な医療職の連携だけではない。管理栄養士、歯科医師、セラピストなどの医療職や介護関係はもちろんのこと、酸素業者や移動に絡むタクシー会社までもが、ワンチームとして動いている。法人の枠を超えた「超法人連携」と言うべきものがあり、行政も40歳前後の若きグループと協働し、医師会との関係も円滑という。

地域医療連携推進法人という枠組みがあり、各地でこの枠組みを使った連携が試みられている。しかし、待ったなしの緊急事態で法人、職種、事業、行政などの壁を乗り越えた強力な連携推進が喫緊課題として明確になってきた。目的共有、協働の意思(そしてお互いを認めること)、コミュニケーションが組織を動かしていく3原則であると経営学は説く。「連携」が叫ばれて久しいが、実際には動いてこなかった。今、この機会こそ連携を実践していく機会となった。

今は恐れるものはない。ハレーションは起こらない。連携実践を強く望みたいと考える。

 「超法人連携」で在宅コロナ対応を可能にしているグループがあり、その実践が広がれば医療現場の風景も変わる。そう思う。在宅現場だけの話ではない。医療というものは、元々、「企業秘密」が存在しない世界のはずである。それなのに、一つの実践が、その仕組みが、どうして全国に広まらないのか。「連携」の次に考えるべきは「横展開」である。

 トヨタは、なぜあれだけ強いのか。トヨタはカイゼン事例を一職場一工場に止まらせない。分かりやすい形式知にして全社普及を図る。だからトヨタ生産方式(TPS)は強い、単なるカイゼンの手法ではないのである。今、これが問われている。「横展開」が重要化している。

 専門医に訊くと「治療法は進んできている。重症化はかなり防げる」と言う。全国のコロナ病床を持つ病院で、その治療技術が共有されれば状況は大きく変わらないか。医療経済、医療経営の専門家は機能の集約を説く。重症化予防の技術に秀でた病院に入院患者を集中出来たらどうだろうか。「だから急性期病床削減は止めるべき」という議論とは全く違う話である。

 治療法に自信を持つ病院は、私の知る範囲でも幾つかある。ICUをオンラインで繋いで、ICU専門医が他院のICU診療を指導するという話がある。コロナ治療全般で、これをやることは出来ないか。可能なはずである。当然、治療法の共有は図られて行っている。有効性についての議論も交わされている。それでも十分ではない。コロナ病床と補助金を増やすだけが対策ではない。

 第4波での体験を全国に発信している訪問看護師が居る。情報発信は色々な形で行われ、発信をサポートする動きもある。「横展開」をもっと大々的に出来ないか。熱望する。  「連携」、それも「超法人連携」の実現と技術の「横展開」が急がれる。

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