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2022年診療報酬改定で見極めるべきは…「機能強化」と「連携」
メディサイト 松村 眞吾

 2022年4月からの診療報酬改定の全体像が明らかになった。本体部分プラス改定などといったことは大きな問題ではない、と考える。これだけ機能を問う改定があっただろうか、というのが印象である。今まで、ストラクチャー評価に合わせてきた病院経営だが、厚労省は本気でプロセスとアウトカム評価に舵を切った。病院経営も、それに応じた戦略的対応が必要となっているのではないだろうか。

 急性期では重症度、医療看護必要度の厳格化や新設の「急性期充実体制加算」算定要件が急性期入院料1(7対1看護配置)を算定する病院に限られること、回復期では重症度の高い患者受入れが評価されること、急性期でもあり回復期でもある地域包括ケア病棟の評価で一定の基準を満たさない場合の減算が大きいことなど、機能強化を迫る内容がいっぱい盛り込まれている。診療所での評価の同じである。「外来感染対策向上加算」の新設は発熱外来実施を迫り、加算算定なき場合は病診連携でハンディキャップを負うこととなった。機能強化加算での実績要件と公開義務付けは、安直な自称「かかりつけ医」をけん制する。高度急性期から急性期、かかりつけ医に至るまで、自院の医療資源に合った機能を強化し、役割を果たすことを強く求めた内容となっている。

 地域包括ケア病棟の施設要件厳格化(在宅復帰率+0.25%や自院内転棟6割未満の減算対象拡大など)に頭を抱える病院が多いと伝えられる。地域包括ケア病棟は、文字通り、地域でのケア(在宅医療など)を支援する病棟として位置付けられて設けられたものだが、実際は、多くの場合、自院(自法人)急性期からの転棟受入れという便利使いに使われてきた。2018年以降、要件の厳格化が始まったと見ているが、ここに来て、さらに明確になったと言える。ただし、地域包括ケア病棟の本来の趣旨は繰り返し厚労省から発信されていたわけであり、今回の改定を「ハシゴ外し」などとは言うべきではないだろう。いわゆる2025年を目前に控える次回2024年改定では、より厳しいものが予想される。

 機能を強化するということは、切れ目のないケアの提供を謳う地域包括ケアシステムの趣旨から、地域包括ケア病棟の本体機能は在宅医療支援などのサブアキュートになることは明白だった。個別点数ではなく、戦略的な対応がないと「ハシゴ外し」に遭ってしまうという教訓としたい。ただ地域包括ケア病棟は、総合診療機能を提供できる医療資源が必要であり、今回、強化が迫られる入退院機能の強化にはソーシャルワーカーなどの人材確保が必要となる。主に担うことを期待される200床未満の中小病院にとっては荷が重いというのが実際のところだろう。どうすれば課題解決になるのか。

 「連携」。このことが、今回改定の対応策として重要なポイントとなる。外来機能報告制度が始まる。入院機能に続き、外来でも専門性を生かしているか、などが問われることとなる。今回改定では、紹介状なき初診における5,000円プラス(選定療養費)が7,000円プラスとなり、また「紹介受診重点医療機関」が新設される。機能強化と合わせてのメッセージは、かかりつけ医療機関と大病院など専門医療機関との間の役割分担と、両者の間の連携を強化して行け、ということである。

 コロナ(COVID)感染症拡大で問題となった民間病院のコロナ患者受入れが少ないとの問題は、かかりつけ医療機関と専門病院の間の役割分担が出来ていないというところに根がある。「なんちゃって急性期」と批判する声が上がり、国(厚労省だけではない)は「なんちゃって急性期」をつぶして行こうとしている、そう考えて良いのではないか。急性期だけではない。「なんちゃって地域包括ケア病棟」、「なんちゃってかかりつけ医」もターゲットとなっている。かかりつけ医療機関と大病院など専門医療機関の間の連携強化は喫緊である。そして、地域密着中小病院(200床未満)にとっての任務は、診療所と連携してのかかりつけ医機能を果たすことである。地域におけるポジショニングを明確化しなければならない。診療所にはない医療資源(24時間対応、多職種連携・協働、検査・処置のための)を持って、診療所と共にかかりつけ医機能を果たすことであり、急性期専門医療機関などとの連携を構築することである。そのように促されている。

 今回改定の焦点の一つが地域密着中小病院になったと考えている。ただし、その経営力の強化は一筋縄ではいかない。そこで選択肢になるのが、地域他病院との連携である。地域医療連携推進法人制度が少しずつ軌道に乗って来た。日本海ヘルスケアネットのような成功事例も出て来ている。別に地域医療連携推進法人の形を採らなくても、人材確保・研修の共同化やバックヤード部門(総務部門など)統合などの手はある。一般社団法人を使うという仕組みなどもある。解決すべき課題は、経営環境への単一法人・病院での対応が難しくなってきていることを認識する時、地域全体で考え仕組みをつくるということになる。経営権の問題はあるが、医療機関の適正配置(機能分化)と機能別統合は可能であり、連携の構築と実践がその鍵を握る。

 2024年に本格化する医師の「働き方改革」の課題解決も、実は、機能強化と連携にポイントがある。これは別の機会に書くこととする。

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