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コラム
 
病院間タスク・シェア
〜2022年度診療報酬改定から地域包括ケア病棟の役割を考える〜

 2022年度の診療報酬改定では、これまでも進められてきた病床機能ごとの役割を診療報酬で明確に差別化する改定となった。なかでも地域包括ケア病棟(以下地ケア)入院料・入院医療管理料では、同じ地ケアであっても果たす役割によって明確に”差”がつく結果になった。今回の主な改定内容は、
・在宅復帰率の要件が強化。
・自院の一般病棟からの転棟患者の割合を抑制。
・自宅等からの入院、緊急入院の受け入れ基準を厳格化。
・許可病床100床以上の施設には入退院支援加算1の届け出を追加。
・病床区分が療養病床の場合、原則5%カット。
・急性期患者支援病床初期加算と在宅患者支援病床初期加算を細分化
などだ。
簡単に言うと地ケアの3つの機能うち「ポストアキュート」は抑制の方向で、「在宅復帰支援」、「サブアキュート」は強化という厚労省の意図が色濃く反映されている。

 現在、地ケア病棟の多くが急性期ベッドからの受け皿として機能しているが、特に中〜大規模病院の地ケアは自院からの転棟が大半であり、今後は7対1を削減して地ケアで直接受け入れるなどサブアキュート化への対応が必要になる。そもそも、救急車で運ばれてくる患者が"サブアキュート"か、どうかは結果論であって診察をしてみないとわからない。「医師の働き方改革」の面からも人的、機能的に充実した中〜大規模病院の地ケアがサブアキュート機能を積極的に担う役割と言えそうだ。

 さて、ここで問題となるのが小規模病院の地ケアである。地域の後方ベッドとして機能してきた病院にとっては大きなインパクトとなる。地域医療を支える重要な役割の1つではあるが、今回の改定を見る限り後方連携だけを病院経営の柱とするのは、これから先はなかなか難しいのが現実だ。

 地ケアは、病床機能報告で回復期リハビリテーション病棟と同じ「回復期」に位置づけられているため「ポストアキュート」のイメージがとても強く、「小規模病院は手術などせず後方連携を」というような意見を耳にすることも多い。確かに、命に関わるような高度な急性期医療や集学的な治療を必要とするがん治療などは、設備や人員が充実した大病院での治療が必要だ。医師の集約化についても異論はない。しかし、一方で整形外科手術のように術後数時間後には”回復期”が始まるような治療までICUや7対1看護の病院で行う必要があるのだろうか?高齢者の大腿骨頚部骨折などの一般的な救急医療ならば、小規模病院でも十分対応は可能である。

 これからの地ケアにとって必要な地域連携は、患者さんが急性期から回復期、慢性期に流れるようなタスク・シフト型ではなく、地域の病院同士でタスク・シェアをするイメージが必要なのではないだろうか?そのためには、今ある機能の中から前向きに伸ばせるところを自院の病院機能の柱として地ケアの運用を再構築する必要がある。地域医療構想・地域包括ケアという公共政策の中で地域包括ケア病棟の役割について国が(地域が)求める機能をいかに自院で発揮するのかを改めて問われているのかも知れない。

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