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コラム
 
人口減少の本格化―コロナパンデミックを超える苦難に備える
メディサイト 松村 眞吾

 コロナ(COVID-19)パンデミックで非常時が続くうちに2025年が3年後に迫ってきた。団塊世代が75歳以上になっていき、高齢化率が3割(75歳以上が2割)の達する2025年まで3年しかない。しかも人口は1年間で60万人の減少という。いわゆる2025年問題はより深刻な問題である。最大の危機とされるのは2040年問題。団塊ジュニア世代が65歳以上の高齢者に入っていく。少子化の加速で何年か前倒しになるという観測もある。

 人口減少時代とは、どういう時代を意味するのか。大都市圏にない地方ではすでに始まっている。病医院経営を継続させていこうとしても医師も看護師も、事務職までもが集まらない。ここ数年の人手不足の深刻化は、特に介護事業においてすさまじく、やがて医療にも及ぶと考えている。介護事業分野では、その人手不足がコロナのクラスターを招く一因ともなった。施設運営などに余裕を持たせられない、経営が機能しない、といった状況が日常化して、国は介護事業業界における経営規模の拡大を明言するようになっている。そして、社会福祉連携推進法人制度などを強力に推し進めようとしている。医療の世界にも同じような波が押し寄せてきている。

 人口減少は医療需要の傾向的減少をも意味する。高齢化が進めば医療需要は増える、とはならない。年金生活者の受療率は傾向的に低下していってる。長生きリスクが受診控えになっていく。もちろん総人口の減少は大きい。人手不足と合わさって病医院経営が成り立たなくなっていく。首都圏においてすら、それを予感させる地域がある。地域のサイズに合わせた医療供給体制を考えていかなければならない。競争ではなく協調が必要と言われる所以である。課題解決策として、国が用意したのが地域医療連携推進法人であり社会福祉連携推進法人である。

 山形県庄内地方では、地域医療連携推進法人である「日本海ヘルスケアネット」が成果をあげつつある。ここで注目されるのは、中核病院である日本海総合病院を中心とした参加法人間の現場交流であり、参加法人の利益につながる地域フォーミュラリのような取り組みである。「経営」が徹底されている。単なる資金面、物品購入などでの共同化ではなく、経営を共同化(経営統合=経営権譲渡ではない)しているところだろう。クラスター対応も、保健所のそれより巧みに早期収束を実現している。これからの日本では経営人材が払底していく。一方でESG(環境、社会、ガバナンス)経営が要求される。どこかで規模を生かした経営をしていかないと個別法人経営も地域医療も、どちらも成り立たなくなっていく。

 世界を覆うインフレの波は工事費の高騰をもたらしている。移転や病棟建計画している病院も少なからずあるが、当事者の危機感が薄いように感じられてならない。各地で入札不調(予定工事費では請け負う建設会社がない)は相次ぐ中、建替えに伴い投資回収をどうするかの中長期計画を作成している法人(自治体を含めて)がどれだけ存在するのか。コロナ(COVID-19)パンデミックにおける補助金ラッシュは終わりを迎えつつある。医療福祉といった最重要インフラは地域全体で(競争ではなく協調で、さらに一緒になって)経営を考えていかなければならないだろう。

 診療報酬の加算に拘り一喜一憂するのは「経営」ではない。2024年に始まる医師の時間外労働規制、生産性向上のためのタスクシフトとタスクシェア、生産性を上げていくためにはデジタル化の推進も必須であり、経営規模を大きくして、経営人材を獲得、育成し、もろもろの課題解決を図っていきたい。簡単ではないが難題でもない。関係先と共に考え実行していきたいと考えている。

  今の「経営」の発想のままでは、老朽化した病棟の建替え(工事費高騰)、PHSサービスの終了とスマホ移行をコスト増ではなく、新しい情報共有の仕組み化として行なうこと(デジタル化)、タスクシフト、タスクシェアを多職種のモチベーション、エンゲイジメント向上策とすること(人的資源管理の抜本的改革)などに対応していくことは出来ない。
加算算定と細々したコストダウンでは病医院経営の将来はないのである。

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