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コラム
 
コロナ第7波が教えるもの
メディサイト 松村 眞吾

 まさに感染爆発である。コロナ第7波は誰がどこで感染してもおかしくないほど、感染が拡大していっている。ただ重症化する例は多くない。高熱と喉の痛みの酷さを訴える人もいるが、オミクロン型(同派性型)は、デルタ型までのとは違う病気と考えた方が合っている。
8月5日、日本感染症学会など4学会が、共同声明を発表した。「症状が軽い場合は、65歳未満で基礎疾患や妊娠がなければ,あわてて検査や受診をする必要はありません。自宅療養を続けられます。この場合,新型コロナウイルス専用の特別な治療は行いません」としている。

 現実はどうかと言うと、例えば、大学病院の救急が「発熱外来」化しているとの指摘が上がっている。コロナに限らず、重篤な疾患を診るべき急性期病院が、普段なら市販薬で治してしまう人までが「不安だから」と押し掛ける患者で機能不全に陥っている。コロナ以外の一般診療が圧迫されている。何かおかしい。これには幾つかの要因がある。以下に示す。

@「念のため、お医者さんにかかろう」という頻回な受診が習性となっている。年間受診回数は先進諸国の中では群を抜いて日本が多いこと
 ※2類感染症という位置付けで窓口負担ないことが輪をかけている。
A非常に深刻な感染症という2類感染症という位置付けがなされていて、受診医療機関が限定され、かつ全数把握ということで感染者、濃厚接触者をフォローするという建前で、医療機関や保健所の負担が大きい。また国民に対し、過度な不安を与えていること
B毒性、医療資源の実態からすれば5類感染症に変更するのが適当であるが、また医療界も自治体も5類への変更を要請しているのに、国は何故か慎重姿勢を崩さないこと
C高齢者施設の「協力医療機関」が機能せず、施設療養できない状況が発生
こういったことが、コロナ診療そのものというより一般診療を危機に晒している現状がある。

 喫緊課題としては国が5類感染症への指定替えを行ない、国民に対して明確なメッセージを出すことによって安易な受診を減らすこと、「発熱外来」以外の医療機関でも受診できるよう環境を整えることである。特に、国民へのメッセージが重要だろう。継続的な課題として、以下を考えていかなければならない。
@身近なところでゲートキーパー役を担う「かかりつけ医」機能の整備についての検討
 ※いずれかの医療機関に登録しておくかかりつけ医登録の制度化も検討課題である。イギリス、フランス、ドイツなどは、既にかかりつけ医登録制度を採っている。
A救急制度に何らかの形のトリアージを採り入れること
 ※フランスの救急制度SAMUなどを参考に
 またオンライン診療の普及促進による医療者、患者双方における負担軽減も重要化
B在宅医療の高度化を進め、在宅医療制度の普及を図ること
 ※フランスの在宅入院制度など、高度な専門医療を実施
C高齢者施設「協力医療機関」を機能させる策の検討
 ※介護保険優先原則など医療側への報酬が低いという問題もある。

 個々の医療機関として取り組んで行かなければならないことも見えてきた。
@診療所、中小病院では「かかりつけ医」としての役割認識と機能充実を図ること
 ※役割を果たすことで収益改善が実現する。この2年間で見えてきた。
  関連して言えば、報酬が低くとも高齢者医療機関は然るべき役割を果たすべき。報酬は、今後の制度改正で上げられていくと判断
Aオンライン診療対応を考えるべき。デジタル化対応も喫緊課題
B地域医療構想などは避けて通れるものではなく、地域医療連携推進法人など地域での協働を戦略として位置付けること
C特に中小病院(200床未満)は在宅医療の取組み、中堅病院(300床規模)は在宅医療支援を選択肢として考えること
D建替、改修を控えた病院は建設工事費の高騰も睨むと、人口減少時代(=医療需要減少)の生き残りためには病床削減、在宅展開も選択肢として考えること

考え方の骨格は前回コラムと同じである。「医療崩壊」を回避していくためにも、自院の生き残りを図っていく上でも考えてもらいたい諸課題である。

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