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コラム
 
中医協会議視聴のススメ
IMSグループ本部事務局(元製薬会社勤務)
須藤 夏樹

 2022年末から2023年初頭にかけて中医協は薬価関連の議論が活発に行われています。
中医協の議論はYouTubeで配信されることが多いので、私は出来るだけ視聴するようにしています。(iPhone内蔵の画面収録機能を使って通勤時に視聴することが多いです)
時間的に厳しい場合は、厚労省の資料解説は飛ばして(資料を見るだけでもある程度理解は可能ですので)ディスカッションの場面だけでも視聴しています。
議論をなぞり、制度が何故変わったか、どういった政策誘導目的があるのかを理解するよう努めています。変更された制度を追いかけるのではなく、患者さんのための制度趣旨と医療経営を両立させることのできる視点を持ちたいと考えています。

 つい先日、いわゆる中間年改定について答申が行われました。現在(1月末)は中医協総会や薬価専門部会で高額医薬品(ゾコーバ錠)に対する対応の議論が活発に行われています。この議論は単に一薬剤の薬価上の評価に留まらず、今後日本の国民医療費にも多大な影響があるであろうレカネマブの薬価算定時の試金石としても注視すべき議論と考えています。
昨年末の薬価専門部会では医薬品関係業界からの意見聴取が行われました。
海外で承認された薬剤の日本未承認というドラッグラグの再燃や急速な日本市場の国際競争力の低下が指摘された一方で、国民負担軽減の観点から中間年である令和5年も薬価改定を実施し、薬剤費を3,100億円削減とする決定がなされました。
新薬の開発が推進されないと救われるべき患者さんのアウトカムを阻害してしまいます。しかし医療費が高騰し私たちが医療費負担に耐えられなくなってしまっては国民皆保険制度を保てなくなってしまいます。

 イノベーションの評価と医療費抑制による国民皆保険制度の堅持をどう両立させていくか。
これらの議論は薬価と薬剤費負担のバランスに留まらず、医療提供体制についても全く同じ議論と考えています。すなわち国民皆保険制度の堅持と私達や次の世代の医療費負担をどう考えるか。令和3年度の国民医療費はコロナ禍で多少伸びは鈍化したものの概算で44.2兆円、40兆円越えは9年連続となっています。また国の財政は約142兆円超の歳出が税収を上回り、その差額約64兆円は次の世代への借金である公債で賄われています。この事実を踏まえて、私たち患者市民の負担も考えていく必要があると考えます。世代間の公平性の観点から高所得(多資産)高齢者の負担増、全ての外来受診時の少額定額負担、薬剤の保険給付範囲の見直し、そして小さなリスクには「自助」で対応するという意識の醸成と保険給付範囲の適正化に伴う選択肢の拡大など様々な提案がなされています。これまでと同じ医療が受けられるのではなく、より公平で、より効率的な医療が必要とされるのでしょう。多少の痛みは伴うかもしれません。しかし私達、患者市民自身も負担増をも含んだこれからの議論をしなくてはならない時期に差し掛かっているように思います。

 中医協の2号側委員と1号側委員そして公益委員の真摯な議論を傍聴することで、事象を一面的に捉えるのではなく多面的に思考できる視点を学び、人に働きかけていきたいと考えています。

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