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コラム
 
診療報酬改定を控えて
メディサイト 松村 眞吾

 年末に0.88%のプラス改定が報じられた診療報酬改定だが、その内容はどんなものとなるのだろうか。見えて来たのは後期高齢者増加に備えての体制整備を図ろうということ、財政の問題を踏まえておこうということ、急激な人手不足に備えようということ、などであろうか。ある中医協ウォッチャーは「医療資源投入量改定?」と問いかけた。一言で言うと高齢者医療の増加と「働き方改革」実現=生産性向上の両立を目指したものと考えたい。

 入院においては高齢者救急の課題解決策として看護配置10対1の新類型病棟が打ち出された。地域包括ケア病棟(地ケア)においては救急対応が十分でなく、また13対1の看護配置では難しい局面もあるということが議論されている。ただし、新類型病棟の内容と言うか位置付けが、今一つ分からない。誤嚥性肺炎、尿路感染症、圧迫骨折を中心に救急対応の必要性が増してくる、それもマルチモビディティの高齢者が増えていく中で、これへの体制整備が重要であるとの判断だろうか。疑問が残る。DPCにおける在院日数短縮が図られようとしていることなど、急性期入院料1(7対1)病床を一気に減らして受け皿として新類型を用意しようと考えているのではないか、ということ、そして単価から考えて地ケアからの転換が増えそうに思うが、在宅から入院への逆行が起こらないかということ、である。

 外来、特に診療所や200床未満の病院における「かかりつけ医」評価に関連するが、生活習慣病管理料、外来管理加算、特定疾患療養管理料などの整理統合が噂されている。算定が進まなかった地域包括診療料・加算に統合していくという観測もある。「開業医は儲け過ぎでありマイナス改定すべき」という財務省サイドの意見は退けられたものの、診療所などの報酬を「適正化」していくという狙いは果たされそうである。

もっとも患者サイドから見れば分かりにくい診療料であったことは確かであるし、診療所外来関係も将来は包括評価にしたいというのが国の考えであろう。薬剤関係については詳しくは別の機会に譲る。ただ、敷地内薬局についての考えが「かかりつけ薬剤師」評価と逆行する結果にならないかと思ってしまう。療養担当規則自体が今の時代に合っているかどうか。

 以上、論じた通り、今(1月4日)の時点では、分かりにくい内容かと思う。診療密度を上げよう(医療資源集中投入で在院日数短縮)ということと病棟の「働き方改革」は矛盾しないのか。診療密度が上がれば負担増で離職も増えかねない。高齢者救急と入院が増加すると見ての新類型病棟のようだが、現実に夜間帯など、どこまで二次救急を引き受けられるのか。コロナ禍での「医療崩壊」、「医療ひっ迫」があったわけだが、そもそも軽症救急も多かったのではないか。高度急性期などからの「下り搬送」評価が予想されているが、特養や老健における医療介護連携の充実で軽症救急を減らすことは可能であり、先ずはその議論からだと思うが、中医協ウォッチャーによれば関連させての議論はなかったようである。

 単価上昇が期待できるので新類型病棟も検討したいが、自分のところの都合だけを考えての安易な意思決定は、「働き方改革」、在宅移行、総合診療機能などとの方程式を解くことにつながるかどうかよく考えたいと思う。マルチモビディティの問題は「かかりつけ医」とは何かを問いかけている。もともと生活習慣病管理料などは窓口負担が高額なため、患者が逃げると算定しないところが多かった。基本は「かかりつけ医」としての機能を果たすことで増患・集患が実現するということは、コロナ禍における発熱外来で証明されたと思うがいかがだろうか。

 国のメッセージが、今ひとつ読めない状態だが、高齢化、人手不足(だからこそ「働き方改革」)、財政問題の存在などが改定の背景にある。連携、かかりつけ、現場視点などがキーとなって来る。引き続き、改定の内容を観察していきたい。もちろん、介護報酬と障がい者福祉サービス等報酬も、よく見て関連を考えていく。

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