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コラム
 
ジェネギャにぴえんと静かな退職
メディサイト 谷村 美保

 最近、私は講義で「ジェネギャにぴえん」という造語を頻繁に使用しています。これは、ジェネレーションギャップが引き起こす苦悩を若者の言葉で表現したもので、このギャップが静かな退職を促進する一因となっています。静かな退職とは、実際に退職するわけではなく、従業員が仕事への熱意を失い、最低限の業務のみをこなし、積極的な関与を避ける状態を指します。このような状況はキャリアや組織への貢献意欲の喪失として現れ、組織のエンゲージメントや生産性に悪影響を及ぼします。

 静かな退職の背景には、ジェネレーションギャップが大きく影響しています。例えば、文末の句点「。」が威圧的と感じられる「マルハラ(マルハラスメント)」のように、世代間のコミュニケーションの違いが摩擦を生じさせることがあります。不公平な評価制度や年功序列文化が根強い組織では、努力が報われないと感じることも静かな退職へとつながります。さらに、柔軟な働き方の選択肢が限られていることも、ワークライフバランスを重視する人々にとって大きな不満の要因となります。これらの要因が絡み合うことで、組織の包括性や帰属意識の欠如を招き、静かな退職を加速させてしまうのです。

 日本の企業文化では同質性を重視する傾向がありますが、多様な価値観や働き方を受け入れる柔軟性が不足しています。公平な評価制度の導入や、自由な意見交換が可能な組織環境の整備は、従業員が自分の役割を理解し、貢献している実感を持てるようにするために重要です。また、世代ごとの価値観や働き方の違いを理解し、尊重することが不可欠です。Z世代はデジタルネイティブとして効率性やタイムパフォーマンスを重視しますが、ベビーブーマーやX世代は対面での関係構築や直接的なコミュニケーションを好みます。そのため、Z世代にはデジタルツールを活用した柔軟な働き方を提供し、一方でベビーブーマーやX世代には対面での交流機会を確保するなど、バランスの取れた環境を構築することが求められます。異なる働き方を柔軟に取り入れることで、組織全体の強みに変えることが可能になります。

 また、従業員が自らのキャリアを積極的に考え、成長できる環境を整えることも重要です。キャリア面談や「越境学習」(業種や組織の枠を超えて学ぶこと)を通じて個々の成長意欲を引き出し、世代間の違いを理解し合うことで、多様な価値観を持つ効率的なチームを構築することができます。さらに、組織内でのメンタリングプログラムやワークショップを定期的に開催することで、従業員同士の相互理解を深め、より協力的な組織文化を育てることができます。

 こうした課題に対応するために、本コラムでご説明したのが「DEIB(Diversity:多様性、Equity:公平性、Inclusion:包括性、Belonging:帰属性)」の考え方です。この視点を取り入れることで、組織の環境を改善し、持続的な成長へとつなげることができます。ジェネレーションギャップや組織のエンゲージメント低下が静かな退職を引き起こす要因ですが、DEIBの視点を活かすことで、これらの問題を乗り越え、より強い組織へと変革することが可能となるのです。

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