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コラム
 
 医療モールについて考える   
   メディサイト 松村眞吾

 医療モールの開発・運営をお手伝いしている関係で、最近、幾つかの取材を受けた。医療モールの流行?がマスメディアの注目を集めているようである。開業を希望するドクターにも、開業投資の削減や他院との相乗効果に関心を示す向きがある。果たして医療モールは患者とクリニックの「味方」となり得るのだろうか。

 医療モール建設の動機(オーナー側の考え)は、大概は以下のとおりである。

(1)医療・介護の分野は高齢化に伴う有望な分野であり、安定した賃貸収益が望める。商業ビルなどより安全である。
(2)医療関係に投資することは地域に良い顔が出来る。
(3)クリニックが集まることで相乗効果が期待でき、開業医の需要も望める。

 この他に、ヘルスケア事業を行なっている企業が関連事業的に始めることもある。ただ多くは医療モールを作ればそれで良いだろう、と単純に考えていることが多い。せいぜい開発・運営に病院の事務長経験者でも入ってもらえれば心配ない、と考えているのが現状ではないだろうか。

 集まれば相乗効果が出てくると考えるのは甘い。当たり前のことだ。開業とは一国一城の主になることであり、単純に集まれば集患がやり易くなるということはない。ショッピングセンターで業種・業態の整合性も考えず、勝手気ままに出店させればどういうことになるか?雑居ビルは閑古鳥が鳴くものだ。下手をすると医療モールならぬクリニック雑居ビルになってしまう。却って患者の足を遠ざけてしまうだろう。

 医療モールでテナントの懇親会を開催すると、ある光景に面食らう。入居して半年以上たったドクター同士が初対面(同様の)挨拶を交わす光景だ。えっ、本当ですか? 医療向けの箱を作って集めただけの医療モールはこんなものである。

 オーナー自身が医療に対する何かコンセプトを持たなければならない。志と言っても良い。そしてドクターのベクトルを揃えていかなければならない。一朝一夕に出来ることではない。ドクターらと共通言語を持って、何が患者の利益となって集患・増患に結びついていくのかを真摯に考え、情報発信する仕組みを作り、連携を構築して実践するように持っていかなければならない。簡単なことではない。モール全体のコーディネートは、診療を持っているドクターに出来ることではない。ならば病院事務長経験者でも雇えば良いのか。それはその個人の能力によると思う。ただしサラリーマンを超える覚悟と活動をする人物でなければドクターらの共鳴は得られないだろう。開業医は一人ひとりが事業主なのだ。

 ショッピングセンターのことを考えれば当たり前のことだと分かるだろう。ましてや定まった経営スタイルのない医療の世界が対象である。モール全体にテーマ性を持たせて、情報発信と診診連携の実現を図る。難しいことだが、それが可能にならないようであれば、医療モールを作っても無駄であると極言できる。簡単に考えないで欲しいものだ。
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