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コラム
 
漢方でからだを考える 
 大阪漢方振興財団
理事長 河田 佳代子氏

 『木を見て森を見ず、森を見て木を見ず。』これはよく西洋医学と東洋医学の違いを表現するときに用いられる言葉です。これは正しいとは言い切れませんが、イメージを理解するのには適しているかも知れません。

 近年、西洋医学は遺伝子の解明が進むと同時に加速度的に細分化し進歩してきました。だからと言って東洋医学が古い、または役に立たなくなったというわけではありません。むしろその逆で、局部の病変を理解した上であえて心を含む体全体から、または環境や気候の変化までを考慮した全体のバランスを見る東洋医学の必要性が見直されつつあります。「木からも見るし森からも見る・・」です。

 例えば、消化器の手術後、まれに腸閉塞状態を合併することがありますが、この状態に大建中湯という漢方薬が有効であることがわかり、今や手術後に頻用される漢方薬となっています。この大建中湯には乾姜(生姜を干した物)と山椒、高麗人参など極身近な薬味しか入っていません。しかし、腸蠕動運動の低下している原因が腸血管循環低下に関わり、またそれは冷えが原因と体全体から考えることにより、ただ「胃腸を温める」薬が著効するのです。

 東洋医学では食物の持つ栄養を『五気六味』と表し、五気(寒性・涼性・温性・熱性・平性)、六味(酸・苦・辛・甘・鹹・淡)の配合によって五臓(肝・心・脾(小腸)・肺・腎)を働かせるために必要な「気」を補うと考えています。五臓を調和するためバランス良く味わって食べることが重要であり、また体が必要としていれば、酸っぱいものが食べたい、甘い物が心地よいなど自らのバランスをとるため味を求めます。自然体で五感を働かせ、からだの声を聞くことでビタミン剤などでは補いきれない身体の調和を『医食同源』の面から再度考え直したいものです。

 また、西洋医学は一旦心と体を離して考えることで急速に進歩しましたが、東洋医学では『心』は常に体の中にあると考えているのも興味深いところです。『七情到病』、『内傷七情』という考え方があり、七情とは怒・喜・憂・意・思・悲・驚の七つの感情のことです。これらの感情にはそれぞれ関係の深い臓腑があり、『七情到病』は七つの感情のどれかを常に感じていれば、その関係の深い臓腑から病になるという意味です。例えば、常にイライラ怒っている人は「肝」を病むと言われ、「肝気」の流れを阻滞し、頭痛や腹痛、胸痛などを起こしやすくなります。この場合の「肝」は東洋医学的な意味で、西洋医学的な肝臓ではありません。また、『内傷七情』はその逆で、常に胃の調子が悪い人は、ついくよくよと考えこむになり胃腸の病から「思」という状況を来しやすくなるというものです。いわゆる『未病』の状態や『慢性疲労症候群』の一部にもこのような状態が見受けられます。「気」を偏らせないことが大切です。

 四季にも意味があります。特に冬は「蔵す季節」といわれ、春に芽吹く土台となる土(からだ)をつくる季節です。からだを冷やさず冬の体に良い根菜類をしっかり摂って五臓の「気」を養い、新たな季節に臨みたいものです。
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