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コラム
 
 ナースのストレス対処の鍵は? 
高知県立大学特任教授
久保田 聡美 氏
(元近森病院看護部長)

 臨床現場で働くナースの周りにはストレスが溢れています。古くからナースの職場は5Kと7Kとか揶揄され労働条件としては厳しい状況が指摘されてきました。一方 「白衣の天使」という表現に代表されるように「憧れの職業」のイメージも持っています。そうした相反する2つの顔を持ったナースという職業の特性が、ナース自身を苦しめる一番のストレス要因なのかもしれません。

 最近「辞めたいナース」と面接していると気になる傾向があります。ストレスフルな状況をとても冷静に分析し、自分の置かれた状況、周囲との人間関係をみつめる力があるにも関わらず、自分の事はみえていないのです。自分のことは棚に上げて周囲を批判するというパターンです。そして、そうした傾向をもつナースの存在はその周囲のストレス要因にもなってしまっています。そのナースが指摘する状況は、ある意味とても大切なことで、周囲のナース達も当該部署のマネジャー達も何とかしたいとは思っていることではあるのですが…「あの人にいわれたくないわ」と言いたくなるような態度なのです。そんなナースは、そうした周囲の反応にも敏感に「私がいくらいっても変わらない、イケてない」と厳しい評価をしてします。そしてその評価は、他の誰でもない自分自身を一番苦しめる結果となり、「こんなはずではなかった、もう辞めるしかない」という結論に至ってしまうのです。

 一昔前は、どんな厳しい労働条件の下でも「患者さん中心の看護」を提供できる専門職としての高い志を持ってこそナースというイメージを大切にしてきました。そろそろ、そうしたイメージから脱却する時期なのかもしれません。ナースは、神様でもなければ、天使でもないのです。苦手な患者さんや困ったご家族には思わず無愛想になることもあるでしょう。わがまま言いたい放題の後輩やわからずやの医師には反発だってするでしょう。まずは、そうしたストレスフルな環境において、うまく対処できない自分自身を冷静に見つめることが一番大切なのかもしれません。
ストレスは、ラザルスらによれば「その人自身が環境との関係において,負担や脅威を感じ“対処”が必要だと“評価”されるもの」1)だとされています。周囲を批判するばかりでなく、出来ない自分も素直に認めると、周囲からの支援も得られます。その支援に感謝しつつ、周囲の環境も冷静にみつめて対処に活かすことが出来れば、それは成功体験となるでしょう。すると、その経験は次の困難な状況にもよい影響を与えるという好循環が生まれます。ピンチはチャンス! ストレスは悪者扱いされますが、その状況を上手く味方につけることが出来れば、自分がそれまで持っていると思ったこともない「適応的な対処の原動力」1)を引き出してくれる…そんな不思議な力も持っているのです。

文献
1)Lazarus R.S, Folkman S:Stress, Appraisal, and Coping 1974,本明寛,織田正美,春木豊訳,ストレスの心理学−認知的評価と対処の研究,実務教育出版,1991
2)久保田聰美:実践ストレスマネジメント 辞めたいナースと疲れた師長のために、医学書院、2010

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