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コラム
 
 診療報酬・介護報酬同時改定を前に−(2)加速する在宅移行の流れ
メディサイト 松村 眞吾

 今回の新療報酬・介護報酬改定についての総論的なことを前回に書いた。今回は焦点とも言える在宅について考えてみたい。厚生労働省医政局長は「新在宅医療・介護元年」にしたいと宣言した。ここ数年、在宅移行の推進は行なわれてきたが、今回は「本気」が見えてくる。急性期病院の在院日数短縮はテクニックを弄して済む段階を過ぎた。老健(介護老人保健施設)における在宅復帰の実績評価などは最たるものであろう。在宅医療に取り組む医療機関にとってもハードルが置かれ始めた。単に在宅療養支援診療所(在支診)、在宅療養支援病院(在支病)を届けるだけでは許されなくなる、そんな風景が見え始めた。

 在支診では強化型と呼ばれるタイプが新設される。要件は(1)常勤医師3名以上(2)過去1年間の看取り件数2件以上(3)過去1年間の緊急往診実績5件以上、などである。がん末期は診ませんという姿勢では、在宅関連点数が大きく下がる可能性が出てきた。改定毎に看取りの実績が問われていくであろうことは、ほぼ確実と思われる。数年前まで年間死亡者数は100万人であった。これが160万人に増えるとされる。病床や施設を増やす財源も人材もないという現実がある。在宅での看取りの体制を整備していかなければ立ち行かないという判断であろう。訪問看護での短時間訪問の評価も同じ考えからだろう。

 介護でも在宅対応強化の策が採られた。新設された24時間訪問サービス(定期訪問・随時対応型訪問介護看護)は、1ヶ月の報酬でみると例えば老健などの評価と同じ水準かそれ以上であると言え、いかに国が在宅を支えることに報酬を与えようとしているかが分かる。実質的にマイナス改定と言われた介護報酬だが、施設系に対して居宅系サービスの「厚遇」が目立っている。24時間訪問サービスにおける人材確保はきわめて大きな問題だが、医療も介護も報酬の仕組みは在宅シフトがここまで来たかと感じる。

 開業医も中小病院も、回復期や療養期の医療機関も、基本的には在宅対応の体制を整えていくべきだろう。有床診療所での緩和ケア・看取り加算も新設された。回復期なども在宅復帰支援を行なえと解釈できる。繰り返しの形になるが、在宅医療における人材確保は大きな問題である。開業医もグループ化を迫られてくるだろう。外来診療においても地域貢献加算改め「時間外対応加算」に再編成される。選択肢の一つが輪番制だ。強化型在支診もグループ診療でしか届け出できない。問題は大きいが考えていきたい。

 訪問看護に興味を持つ看護師は多い。訪問看護師についてのある研究によれば「魅力」も大きいが「不安」が大きな壁となっている。在宅医も同じである。在宅の面白さと24時間待機の不安がある。グループ化また多職種チームがポイントであり、そのマネジメント構築を急がなければならない。とにかく在宅に取り組めば「報酬が上がる」段階から実質的に在宅療養、特に末期、ターミナルの取組みが要求される段階となった。グループ診療・チーム医療の取組みは難しいが、輪番や情報共有などから始めていくべきだろう。

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