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コラム
 
多職種チームのマネジメントを考える
メディサイト 松村 眞吾
 「機能分化と連携」は、今や最大のキーワードとなっている。各機関、各職種が専門性をブラッシュアップして、連携で患者価値の最大化を図っていく。理屈から言えば、限られた医療介護の資源を最大限に有効活用する唯一の方法である。医療・介護の世界は、近年、特に専門職化が進み、多職種チームによるケアが一般的となっている。多職種チーム。職種間の壁を越えての「連携」だが、現実は理屈と違って一筋縄でいかない。

 多職種チームを考えるワークショップなどを行なってきて、分かってきたのは、例えば医師との関係における「敷居」の高さである。訪問介護事業所の管理者がミーティングで医師と議論する。そのことを「雲の上の人と話している」とまで言う。薬剤師はチームの中に居場所がないと悩む。ケアマネージャーはバックグラウンドが違うと同じケアマネ同士でも繋がりが乏しいと言い、医師からも、在宅の医師と病院勤務医の関係の悩み、認知症ケアの必要性から精神科医師との協働を望むが叶わないという悩みが聞こえる。

 地域の医療・介護事業者が集まって地域連携を組んでいこうという動きがある。この場合、多職種によるカンファレンスを重視する傾向がある。多職種カンファレンスの活発な開催。素晴らしいことであるが、実際は各職種における負担が重く、特定のリーダーに依存している危うさがある。ICT(情報通信技術)活用で1地域1患者1カルテを期待する意見も多い。多くの現場を見ていると、カルテデータの共有はどこまで可能性を拡げることができるか疑問に感じる。患者・家族は生活人であり、身体データだけでケアの現場を支えることは不可能なのである。

 マネジメントの基本は「信頼」であり、患者価値の本質は「自分らしさ」である。多職種チームのマネジメントに必要なポイントは、職種間のコミュニケーションの「場」を作り出すことであり、患者価値創造を理念に横串を貫く存在である。それを可能にするのに、どんな方法があるだろう。

事務長としてNPOスタッフとして多職種チームの現場を回り、医療福祉職の社会人大学院生を指導し、ジャーナリストとして取材して回って確信するのは、それを可能にするのは事務職の活用であり文脈情報(コンテキスト)を共有するためのICTの仕組みであるということである。多職種チームのコーディネーターは医療職でなければならないという思い込み、ICTは定量データ共有に意味があるという思い込みは、生活人という患者・家族の本質を見落としかねない。

 マネージャーとしての役割を含む事務職活用、文脈情報を、例えばチャット形式で共有するICTの仕組みが多職種チームの可能性を拡げる。そういうチームマネジメントを考えたいものである。付け加えるならばICTについて心配するには及ばない。スマホを使いこなすリテラシーがあれば、こういったICT活用は十分に可能だからである。

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