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コラム
 
話題の地域ケア会議、その具体像とは?
社会医療法人ジャパンメディカルアライアンス東埼玉総合病院
在宅医療連携拠点事業推進室(菜のはな)室長 中野 智紀 氏
  最近発表された平成26年度の介護報酬改訂案は、地域包括ケアシステムの構築へ向けた国の強いメッセージであると考えられる。しかし、その内容は、地域ケア会議の開催や地域包括支援センターの機能強化など、限定的かつ部分的なものであり、未だにその全体像は見えてこない。

 高齢化した地域には様々な問題が山積している。その中で我々は、地域に散在するヘルスケアサービスにおける需給ギャップが、住民のLiving in placeを妨げている可能性に注目している。すなわち、医療にも介護が、介護にも医療が必要な患者がいる。一方で、地域にはその両方が提供されておらず、健康や生活のリスクが放置され、重症化する住民が相当数潜在していると考えられる。

 埼玉県幸手市では、平成24年度より、東埼玉総合病院が在宅医療連携拠点事業を受託し、在宅医療推進を含む地域包括ケアシステム幸手モデルの構築や共助の為の仕組みづくりを行っている。平成25年度からは、幸手市が実施主体となり、当院を含む北葛北部医師会が事業委託を受けて市全体へ活動の対象を広げている。

 当市の地域ケア会議の特徴の一つに、住民が主催していることが挙げられる。自治会や地区などの従来型のフォーマルなコミュニティに加え、高齢者サロンやNPOなどの新しいインフォーマルなコミュニティも対象としている。平成24年度、当院に隣接するUR幸手団地(3021戸)に最初の「健康と暮らし支えあい協議会」が設置された。当協議会は住民が主催し、行政や地域包括支援センター、医療機関、民生委員を含む支援の担い手を招聘する。我々の役割は地域コミュニティの自立支援だ。暮らしの保健室(保健・医療・介護・福祉などのヘルスケア総合相談窓口)、健康生活アセスメント調査(健康と生活の両面でのニーズ調査)、地域防災、地域リーダー育成、協議会事務局機能の代行など、様々な支援プログラムを通じて、住民の主体性を育む支援を行う。

 他方で、地域で活動するヘルスケア事業者への多職種恊働教育(ケアカフェ@さって)を行い、統合的なサービスが提供されるように教育や連携、チーム編成などをコーディネートする。
 住民主催の地域ケア会議では支援が必要な住民の抽出を行う共に、支援へ向けて、ベストミックスのチームを編成することを通じて、需給ギャップを埋めていく。この会議で解決できない難渋ケースや地域単位のマクロな問題は、市町村レベルの地域ケア会議へ上申され、問題解決を求める。
 地域ケア会議は、一部の地域で行われているようなケアプランをチェックする機関などではないはずだ。急速に進行する地域の高齢化を、限られた資源で乗り越えていく為には、地域に散在する様々な課題や需給ギャップの可視化を行い、是正していく事が肝要だ。さらに、地域コミュニティを再生し、住民の主体性を育む視点も求められると考えている。
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