「地域での連携が必要ですね」と話すと「必要じゃないです」と答える人はまず今の時代はいないだろう。やはり「地域での連携は重要な課題です」「地域連携を進めないと今の時代は乗り切れないでしょう」と多くの人が答えだろう。そのためには、「何が必要ですか」この答えには多くの人が「顔が見える関係が必要です」、「情報の共有できる電子媒体が必要です」と答えるだろう。
函館地域で医療・介護の垣根を超え多職種の集まる「函館ジェネラリストカレッジ」の活動を初めて2年目を迎えている。毎回30から多いと50前後の医療機関・介護保険事業所、時には市民も参加している。「函館ジェネラリストカレッジ」の目的は、医療・介護・福祉にかかわるすべての職種がジェネラリストに成長することで、年に何回か講演やワークショップを開催してきた。地域の多職種が同じ講義を聞き、話をしたことのない職種との話し合い、情報交換を行ない、今後の連携に向けた「顔が見える関係づくり」に役立つなど一定の効果がみられた。しかし、そのなかで、「一人の患者さんに対してじっくりディスカッションできる時間が少ないように感じる」「結局電子上での連絡頼りになってしまう」「連携室ができて連携しやすくなったと思っているだけなのでは?」などの疑問も参加者から寄せられるようになった。
「患者さん利用者を入れて丸い輪を描きたい」。そのような連携を作るにはどうしたらよいか。診療報酬上の退院支援加算1の施設基準では、医療機関の退院支援・地域連携
担当者と、20以上の連携保険医療機関等の職員が年3回以上面会することとされている。「直接に対面して業務上の意思疎通」を行うことが必要であり、会合や研修で一同に会するだけでは当該要件を満たすことにならないとされている。
将来の目指す姿がここにあるならば、顔と名前が一致するだけの顔が見える関係では駄目で、その先にある「意思疎通」が大切である。しかし、意思疎通を行う際に、専門職の職種の垣根を超えているだろうか。地域連携が実は地域の「同じ専門職種の連携」になっていないだろうか。そこが大切ではないかと思う。一方、地域の人たちは本当に地域連携で繋いでもらって良かったと感じているのだろうか。常にここが問われていかなければならないことだと思う。専門職種の安心感だけの連携では地域の人たちに理解してもらうことは難しい。
「丸い輪を描いた連携」。それはもしかすると、地域より先に院内の専門職の垣根を超えるところから始まるのかもしれない。それがないのに地域での本当の多職種連携は生まれるのか?顔が見えて他職種への不満があることが分かる安心感で同職種間の「連携」は生まれるかもしれない。そこにいつも「誰のための地域連携なのか」ということを考えていないといけない。そうでなければ、落とし穴があるような気がするのは自分だけなのかもしれないが。