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コラム
 
経営向上は現場をポジティブにすることから―チームを作る必要十分条件
メディサイト 松村 眞吾

  医療経営に関して、国はどういう考え方を持っているのであろうか。多職種連携などと言われているが、例えば、総務省(当然、厚労省などとも連携しているはず)から出されている「新公立病院改革ガイドライン」(2015年)にある「特に留意すべき点」には、人材に関して「医師等の人材の確保・育成」と「経営感覚に富む人材の登用及び事務職員の人材開発の強化」があると記載されている。「医師等」は看護師やセラピストなど医療職の多くが含まれるのだろうし、「事務職員」と書かれていても、特に事務職の戦力強化が重要だという意味であって、医師と事務職だけが重視されるべきだと言っているわけではない。それでも医師と事務職しか書いてないな、と感じてしまうのはなぜだろうか。

 医療現場では、専門分化が進んできている。かつては服薬管理も医療機器の扱いも看護師の仕事であったが、今は薬剤師や臨床工学技士が役割を担う。管理栄養士が病棟にいる風景が日常となったのは最近のことだと言って良い。医師自体が臓器別に専門化が進む中、看護師も認定や専門看護師が多くなってきた。注目の事務職も医事課だけではない。診療情報を扱う診療情報管理士、医師の傍で書類を扱う医師事務作業補助者、広義で事務職としてメディカルソーシャルワーカー(MSW)など専門家が見られる。結果として多職種間の「信念対立」と言われる対立、チーム医療の混乱がある。医療介護連携も円滑とは言えない。

 これからの医療経営は、ビッグデータとICT(情報通信技術)の活用によりプロセスとアウトカムを「見える」化して質の向上と効率化を図っていかなければならない。財政と人的資源のひっ迫という問題もある。だからこそ、専門分化で質の高い分業を行ない、チーム医療を徹底しなければならない。有能な医師と優秀なマネージャーとなる事務職は重要なポイントではあるが、それは単なる必要条件でしかない。

 清掃や警備スタッフも医療現場を支えるプレーヤーである。医療職は、その専門性を存分に発揮する環境を必要とする。多職種連携は必然であり、そのためにはマネジメントというものがなければ「チーム作って魂入れず」になると言い切ろう。看護師は医療職の中のゼネラリストと言って良いと思うし、事務職は専門がないのが専門のような存在で、組織全体を見渡せる立場にある。データを駆使して自院のポジショニングを行なう、収益改善を図る、といった重要な仕事を担うが、基本として多職種を横に串刺す存在として事務職がある。看護職は増え続けてきた医療専門職を横串できる存在である。

 経営が上手くいっている病院で何が行われているかを見てみたい。麻生飯塚病院は医師から営繕や清掃に至るスタッフの役割を評価する経営者がいる。済生会福井病院は、夜間警備の派遣社員をベストホスピタリティ賞として全職員の前で表彰した。大和市立病院は地方公営企業法全部適用(いわゆる全適)ですらない。それでも医療職らをポジティブにする運営をして収支を黒字化させた。

 分業の利益を実現するためのは、すべての職種をポジティブに評価し役割をリスペクトして、全体を俯瞰するマネジメントが十分条件となる。現場は経営理論オンリーではなく、承認欲求を満たされることによってイキイキとする職員によって動いていく。

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